2023年、アルテックの「スツール 60」は90 周年を迎えます。もっとも普遍的な家具の原型ともいえる三本脚のスツール60は、1933年、アルヴァ・アアルトによりデザインされました。モダニズムの先駆者たちが追及した理想をフィンランドならではのバーチ材で実現するという革新性に基づき、素材も形も現在までほぼ変わることなく、生産され続けています。特定の用途や環境に限定されないデザインは、個人の住まいから公共空間まで自然に馴染み、唯一無二の構造と耐久性により長い時を越えて使うことができます。その簡潔さと誠実さこそが、タイムレスな美しさを宿す本物のデザインである証です。

スツール 60

アルテック製品は手作業による一点物ではなく、工場で製造される量産品です。とはいえ、製品の本質、そして何より素材は完全に機械によってオートメーション化された製造工程とは対極にあります。アルテック製品は創業以来、一貫して厳しい品質基準の下、半機械化によって作られています。つまり機械を用いながらも、多くの工程は人の手によるクラフトマンシップを経て生まれるのです。したがって私たちは、それぞれの製品を完全に均質なものにすることが可能だとも、またそれが必要だとも考えてはいません。素材あるいは製造工程で生じるわずかな違いは欠点ではなく、むしろおのずと生まれたアルテック製品の個性であると捉えています。

フィンランド産バーチ材
アルテック製品のほとんどは、フィンランド産の木材を使用しています。フィンランドの森林の多くは野生のものではなく、国や地域、個人が手をかけて育んだものです。アルテック製品の素材で多く使われているバーチ材や一部の製品で使われているパイン材は、計画的に伐採され、丁寧に加工され、まるで長い旅のようにさまざまな工程を経て、家具の形となって私たちの暮らしに届けられます。
混合林で育つ
フィンランド産のバーチ材の強さと美しさは、多種多様な樹木の混合林で育つためと言われています。より多くの日光を浴びるために、枝は少なく、幹は強く、高く、真っすぐに育ちます。その後ゆっくりと生育し、滑らかで均質な繊維の木材として成熟します。
計画的な伐採
アルテックの家具に使われるバーチ材には、およそ50から80年の樹齢の最高品質の木が選ばれます。木の成長の中で適正な時期を選び、害虫の影響が少ない冬に伐採された後は、乾燥の過程へと進みます。
自然乾燥
伐採された木材は、屋外の雨や雪にさらされない場所に保管され、最大12カ月もの間、ゆっくりと乾燥されていきます。「ブロンド バーチ」という愛称でも呼ばれる、フィンランド産バーチ材特有の明るい色は、自然乾燥させることにより保たれ定着します。
職人による選別
木材は最終的に熟練した職人の目により選別されます。節や変色のない滑らかなバーチ材は、スツールの座面などの表面に使われ、傷のあるバーチ材は、座面の中材やラッカー仕上げを施す部品として使われます。

Wood bending techniques

フィンランドの自然素材を用いた曲げ木の技術 -「L-レッグ」
「L-レッグ」は、アルヴァ・アアルトが1930年代初めに開発し、当時、特許を取得した曲げ木の技法です。無垢材の先端から曲げる部分まで切れ目を数ミリ間隔で入れ、その間に薄いベニヤ板を挟み接着した後、熱を加えながら曲げるという製法です。L-レッグは、シンプルな工程でありながら、厚い無垢材を曲げることができ、さらに頑丈で安定した仕上がりになります。L-レッグのことをアルヴァ・アアルトは「建築における柱の妹分」と呼びました。さまざまなサイズのL-レッグをスタンダード部品としてシステム的に応用することで、「スツール 60」、「69 チェア」、「153 ベンチ」、そして「アアルト テーブル」まで、アルテックの製品コレクションの多種多様な製品が生み出されました。。

Alvar Aalto

北欧の賢人
最も影響力を持った20世紀の建築家の一人であり、建築評論家のジーグフリート・ギーディオンが「北欧の賢人」と例えたアルヴァ・アアルト(1898-1976)は、フィンランドのクオルタネに生まれました。生涯、アアルトは200を超える建物を設計し、そのどれもが有機的なフォルム、素材、そして光の組み合わせが絶妙な名作として知られています。建築は家具と補完し合うものと考えていたアルヴァ・アアルトは、自身が設計した建築に合わせておのずと家具のデザインも手掛けることになります。1931 - 32 年、パイミオのサナトリウムのために開発した最初の家具デザインは世界的な注目を集め、1935年、アルヴァ・アアルトとアイノ・アアルトがデザインする家具、照明器具、テキスタイルを世界的に販売することを目的にアルテックを創業しました。アルヴァ・アアルトが生み出した有機的なフォルムは、のちの建築家の手本となり、彼のデザインした家具やガラスアイテムは北欧デザインが世界に広まる上で大きな役割を果たしました。建築家としてだけではなく、プロダクトデザイナーとしても高い評価を得たアアルトのプロダクトは、合理性を考えたパーツのスタンダード化、新しい曲げ木の技法の開発など、量産を念頭に置いた先進的な考えが取り込まれていました。


Artek

アルテックという社名は「アート(芸術)」と「テクノロジー(技術)」という1920年代に沸き起こった国際的なモダニズム運動のキーワードを掛け合わせた造語です。1935年、アルヴァ・アアルト、アイノ・アアルト、マイレ・グリクセン、ニルス=グスタフ・ハールの4人の若者により「家具を販売するだけではなく、展示会や啓蒙活動によってモダニズム文化を促進すること」を目的に、ヘルシンキで設立されました。その創業宣言(マニフェスト)においても「商業的な側面をはるかに超えた文化的な使命」と考えていたことが読み取れます。今日、アルテックのコレクションは、フィンランドの巨匠たち、そしてグローバルに活躍する建築家やデザイナーによる家具や照明器具、ホームアクセサリーが揃っています。それらは一様に、機能性に基づき、詩的なまでに明快なデザインです。創業者の精神を受け継ぎ、アルテックは今日でもデザイン、アート、建築の交点に立ち、未来への道を切り開き続けています。

Artek 製品保証期間

配送から2年間 商品が材料においても製造においても欠陥のないことを保証します。
但し、次の行為によって生じた欠陥、損傷、不具合に対しては適用されません。
・通常の目的以外の使用による汚損、または破損が生じた商品
・商品の不適切な使用や不正な取扱い又は改造(ファブリックのケアを不適切な薬品で行うなど)
 保証期間を過ぎた商品の修理は有償にて承ります。